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2005年11月のお手入れ品

汗の仕業

汗で腐食した訪問着

きものを着た時 脇に汗をかいたまま放置しておくと 茶色い変色を招いたり 穴が開くということは 以前にも 取り上げました。(注、バックナンバー2002年6月 “汗の変色”をご覧ください) 

その題材は 白地の小紋でしたので ご覧戴いた方々の中には “私の着物は濃い色だし 万一の場合でも 目立たないから大丈夫” と思われた方も きっといらっしゃったことでしょう。 

さて、左の写真は 黒地の訪問着ですが 胸の部分の 仕付け糸で囲った所の中に 縦に白いものが見えます。汗の塩分で 絹が腐食し 裏地の白が見えているのです。

油断は大敵! 大切な着物ですので 裏から黒い布を当てるだけでは能がなく 何か名案はないかとのご依頼です。放っておけば 穴は広がる一方、まず 残っている塩分を取り除く作業に取り掛かりました。

加工後

柄足し加工後

いろいろ考えた末、穴の部分は縦に開いているので 裏打ちした後 衿と同じ柄を足すことにしました。穴の開いた所には いくら上手に裏から当てても 普通では 穴の段差が残ります。それゆえ 金の箔で笹の葉を描いて その段差を埋め 柄のイメージを出来るだけ近づけました。

最近 着物リフォームでよく言われる柄足しという言葉、一見すると 簡単そうに見える技術ですが 柄の流れ 線の勢い 配色の色合わせ等々 きめの細かさが不可欠です。

描き足したことが明らかに分かるようでは センスが疑われますので 実際 どの職人でも出来るというものではありません。

私は 巡り会ったこの職人を これからも大切にしていきたいと 常々思っています。

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