2006年5月のお手入れ品

蝶と霞

蝶と霞の構想

不思議なもので、最近は特に難しい加工や他店で無理といわれた仕事が集まるようになり、うれしい悲鳴を上げています。

左の写真は蝶模様の訪問着ですが、藤色の地紋生地をバックに上品な友禅と刺繍が施され、なんとも言えない柔らかな雰囲気を醸し出しています。
ところが、広い範囲に黄色いシミが出てしまい、お客様から“地色を染め直せますか?”というお尋ねです。

拝見したところ、その原因は染色段階で生地をある種の薬品に通した為ではないかという結論に達しました。
残念ながら範囲が広いシミは取りきれそうもなく、かと言って地色を濃くすれば今のイメージが変わってしまいます。

雰囲気を変えずにシミを隠すには、どうしたらよいでしょうか。

加工後

蝶に霞訪問着

デジカメを買い換えたので地色が異なって見えることをお許しください。(地色は変更してありません)

手始めは、似たような地色の生地に砂子の箔を試し撒きしました。そして、砂子風の和紙を日本橋の榛原和紙店で見つけ、胸、袖、上前、肩それぞれのシミの上にバランスを考えて置いてみました。構想にも上質な素材が欠かせません。

実は今までの経験で、上手く金砂子を配置すると、隠し切れないシミまで錯覚で霞に見えてくるのです。

今回の加工のポイントは“見極め”に尽きるでしょう。色々な修復方法がある中で、お客様と綿密に打ち合わせをしてご意向を忠実に再現する醍醐味。
霞の中で舞い踊る蝶の動きに遠近感が加わって、春らしい訪問着となったようです。

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