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2011年8月のお手入れ品

信用の力

今月は 夏休みを頂きまして リフォームのページは休ませて頂きます。

忘れもしません。数年前の9月下旬のある日 水曜日の午後6時過ぎでした。長年お引き立て頂いているお客様から 1本の電話がありました。 「日曜日の朝までに 単衣の喪服と喪服用絽帯を誂えてもらえないでしょうか」
一瞬私は 貸衣装と勘違いし 思わず聞き返したほどです。

土曜日の夕方に納品すると仮定して 単衣用喪服生地及び絽喪服用帯の手配、手描き紋入れ、着物と帯の仕立てを正味2日間で完了する必要があります。
「そんなの無理」とお断りするのは簡単ですが お客様も無理を十分承知で電話をかけ てこられたわけですから よほどのご事情があったのでしょう。 頭の中では 「何を先に」という優先順位が グルグルと駆け巡ります。

その夜、時間外なのに懇意の問屋さんから生地を受け取り 帯職人の方も 何とか頼みこみました。ところが 難問発生。紋が大変珍しく 両親も私も 初めて聞くものでした。その上 紋の外側の「丸の縁取り」がありません。

紋匠に尋ねると 「どんな紋でも大丈夫です。ただ丸があれば 一晩で仕上げるが 丸なしはとても無理」との返事。
喪服の生地は 紋のところが白く抜けているため 縁を消す黒の色を合わせるのに 時間が必要なのです。仕方なく お客様にご了解いただき その日の深夜 紋屋さんに依頼にいくと 帰り際に「やっぱり 丸が無いほうがいいですよね」とのお言葉。もちろんそ うですが とても無理は言えません。

翌朝 受け取りにいくと 驚くかな 仕上がりは希望通りの丸無しで その上 縁の仕上げも完ぺきです。思わず頭が下がりました。そして入念に仕立て 土曜の夕方にお納めしました。

喜んでいただいたことは 言うまでもありません。しかし 今回の仕事は 日頃の信頼 関係が全てといっても過言ではなく 普段 職人さんを泣かしていては とても無理な話 です。
職人の魂と意地を感じた2日間でした。 

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