2018年7月のお手入れ品

無い袖を振る

袖部分の加工前仮縫い

持ち合わせのない事を言う「無い袖は振れない」
今回は壮大なリフォームをご覧に入れましょう。

齢九十を超えた曾祖母様が祖母様の成人式に中振袖を作りました。
袖丈は76センチ、時は今から半世紀前です。

それを今回、曾孫のお嬢さんが成人式で振袖として着たいと言う。
現代の振袖の袖丈は最低でも1メートルは必要です。
しかし、足すべき生地がどこにもありません。

まず予行演習でお正月に着て、家族3代で曾祖母様に見せたい。
あまりの熱意に押されて取り掛かったのが6月でした。
そこで、下前の胸から下を4等分して仮縫いしたのが左の写真。
体操で言えば E難度は軽く超えていますが、さて・・・。

加工後

紗名古屋帯前部分の刺繍後

仮縫いの繋ぎ目の右に見える小さな茎は、白紙を乗せただけのもの。
白の染料で茎と葉、花を足してカムフラージュの予定でした。

しかし地の朱色が強く、ただ描いただけではピンク色になってしまう。
元の茎は胡粉で真っ白です。
そこで、予想外の脱色と相成りました。

簡単そうに見えますが、白く、かつ真っすぐ縞に抜くのは至難の業。
職人さんは安請け合いしたことを後悔したと言います。
裏から見たつなぎ目の右部分の斑が、苦心の跡を物語っています。

いよいよ加工は佳境に入って参りましたが
此処で何と何と、スペースが一杯!
この結末は如何に、果たして袖が振れるでしょうか?
続きは、夏休み明けの9月号で。
乞うご期待。

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