2018年9月のお手入れ品

無い袖を振る-完結編

つながった袖部分

さてお待ちかね、袖つなぎ完結編のはじまりはじまり。
齢九十を超えた曾祖母様が、祖母様の成人式に作った中振袖。

袖丈は76センチ、時は今から半世紀前です。(7月号はコチラ)
1メートルの袖丈にする為に 下前を4等分して袖に接いで
白で柄を足すはずが、下地の朱色が浮かんできて、さあ大変。

職人さんが生地と格闘の末、直線に白く抜きました。
表から見ると、接いだ縫い目以外は、ほぼ及第点かと思いきや

仕立て前に、大きな問題がひとつ残っていました。
袖に使った下前を、似た生地で同色に染めたまでは良かったのですが
いざお召しになって椅子に座ると、微妙に違う生地が右ひざに出現
演歌歌手でもあるまいし、直立不動をお願いする訳にもいかず・・・。

加工後

身頃の不足分を染めて接いだ写真

最後の手段は、元のおくみと染めた布を縦半分に接ぐというもの
下前の右半分は元の布ですから、足を広げない限りまず安心。

でも、おくみを全部変えると、右胸に僅か色の違いが出てしまう。
そのため、上から20センチは元のおくみを使用。
考えるだけで、頭がグルグルしてきます。

細かい仕様書を書いて、裁断して、仮縫い。
そして、完成したのが右の写真。右胸の接ぎ目は帯の下です。
ここまでたどり着くのは、実に長い道のりでした。

お正月、曾祖母様の青磁色の丸帯と組合わせて、曾祖母様の元へ。
ご提案通り完成できたのは、下前にあまり柄が無かったという幸運もありました。
しかし、一番の理由は、お客様から全面的にお任せ頂いたことです。
空前絶後ながら、ありがたいお仕事でした。

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