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2004年10月のお手入れ品

25年のわだかまり

朱色振袖衿に墨

お嬢様がお召しになってから25年 いよいよ その振袖に お孫さんが袖を通すこととなりました。保存状態は極めてよく どこも傷んでいません。しかしながら ひとつだけ気になっていることがおありでした。それはお嬢様が お友達の披露宴の受付で 付けてしまった 衿の墨のしみです。

「たぶん無理と思うから 墨の上に牡丹の葉でも描いて」というご依頼を受け まずお尋ねしたことは 「手を加えてありませんか?」  

付いたままの状態と聞き 一筋の光明がさすと同時に 職人の顔が浮かびました。

しかし、ハードルはかなり高いです。

加工後

染み抜き後振袖

職人は 一目みるなり 同じことを私に尋ねました。「染み抜きに出してありませんか?」 そして、「さわってなければ 取れるでしょう」と あっさり答えました。

それから2週間後 仕上がった衿を見て 驚きました。どこにも 痕跡がありません。お客様も 「どこに付いていましたっけ?」と 私に尋ねるありさま。

その後 解いて洗い張りを行い 寸法を全体に大きく仕立て直しました。

そして 納品の日 文庫紙を開けた瞬間に 25年間のわだかまりは 忽然と消え去り 同時に この仕事にたずさわっていてよかったと しみじみ思いました。

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