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2005年10月のお手入れ品

時の経過

綸子訪問着

染み抜きできれいになった着物を 箪笥にしまっておいて いざ 着ようと思ったら 茶色い大きな輪ジミ、そんな経験をお持ちの方も きっといらっしゃるでしょう。特に薄色の着物の場合は 大変厄介です。

左の写真は 白地訪問着の袖部分ですが 以前 他店で小さなシミを取ったときの薬品が残っているようで 花の先端が お月様のように丸く変色しています。  

優れた職人の腕をもってしても これだけ広い範囲のシミを 均一に抜くのは 大変困難で、その上 反対の袖と胸にも 同じように大きなシミがあります。

困り果てたお客様からのご相談、 想い出を修復するのは得意な私ですが 今回も なかなか手強そうです。

加工後

訪問着色揚げ後

他の職人の不完全な仕事を直す作業は 少なくともそれより技術が優れていないと出来ません。時間が経過すれば なおさらです。

まず、シミを出来るだけ落とし 柄を糊で伏せて なるべく薄いベージュ色を引き、仕上げは金線で括る。この訪問着の場合は すぐにストーリーが描けました。

しかし、どんなに自信のある修復でも 染め上がるまでは “シミがうまく消えるだろうか” “地色が柄と調和するだろうか”と 次々に心配の種が浮かんでくるのです。それでも 仕上がった瞬間、その全ては 霧散します。

「信用」 月並みな言葉ですが その意味と大切さを 再認識した 仕事でした。

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