これは今から30年程前、私の父がお嫁入りのお支度品として注文を受け、創作した振袖です。
美しい水色地で、模様は能衣装をアレンジした花立涌(はなたてわく)、共裾回しにも柄が付いていて表地には十分な刺繍が施されています。
今回、お母様からお嬢様に是非着せたいとのご要望で調べてみたところ、時間がたっているために所々にシミが出ておりました。
そこで、洗い張りしみ抜きをして裏地も取り替え、取りきれなかったしみの所に加工を施してみました。
全体のイメージを変えたくなかったので、所々に摺り箔と切箔を散らしてみました。
格調を出すために、本金箔を使用しております。
時の流れは早いもので、15年、20年はあっという間に経過します。
今回のお手入れにより、母から娘、そして孫へと受け継がれてゆく一歩が始まりました。
半世紀近くもお引立ていただいた結果として、こういう仕事にかかわれることは本当に幸せな事と思います。
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