これは今から20年くらい前、お嫁入りの際に作られた黒留袖です。
この秋の結婚式で着るために箪笥から出してみたところ、上前の白い雲取りの中が所々、茶色く変色していました。このままでは着られないのでしみ抜きをしてもらえないかと、お客様のお友達からご依頼を受けました。
調べてみたところ、白いところ(胡粉染め)の変色はカビでかなり重症です。そこで、部分的に解いてシミの部分を出来るだけ洗い落とし、金箔をまく事をご提案しました。
ご了解を受けて、まず丸洗いしみ抜きから始めました。
ひとくちに金箔や金砂子を蒔くといっても、ただ蒔けばよいというものではなく、箔の色や蒔き方、隠すシミの位置や隣の柄とのバランス等々、難しい事がたくさんあります。また、下地の洗いが不十分だと、後からシミが浮いてくることさえあるのです
ですから、職人さんにとって大切なことは、技術はもちろんですが絵のセンス、俗に言う「絵ごころ」があるかどうかです。これは持って生まれた素質もありますが、日頃の心がけ、良いものを見ているかどうかに大きく左右されます。
残酷な言い方をすれば、駄物を見ていては一生かかってもかないません。 いい風景や良い絵、素晴らしい音楽等々、染物に直接関係ないものが微妙にかかわってくるから不思議です。
この着物も優秀な箔職人さんの手によってよみがえり、高級感が漂ってきました。 私たちにとって職人さんは宝物です。
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