今月は、お手入れ物の中で最も難しい品物の一つと思われる、色無地の抜き染めを御覧頂きましょう。
世間ではよく“染め直し”と簡単に言いますが、「染め直し=色を抜く」ことなので、脱色時に生地がこすれて表面に白い「スレ」が出てくることがあります。
これが難物で、濃い色にしようが柄を乗せようが、斜めに見ると浮いて見えるやっかいなものです。
色無地の場合はなるべく色抜きを避けて、初めは薄い色を掛け次第に濃い色をかけることをお薦めしているのはそのためです。
左の写真は今から30年以上前に染めた色無地紋付きです。ただ、部分的に色やけして段差があり、このまま色かけしても同じように濃淡が出そうなので、思い切って色を抜いてみました。
幸いにもスレが出ず、以前より幾分濃い色に染めて無事に出来上がりました。
色無地の難しさは何か・・・。ひとことで言うとごまかしが利かないことだと思います。地模様のみで柄が無く全体が一色のため、年齢や雰囲気がストレートに出てしまいます。
書にたとえると、一筆一筆の点画をはっきり書く楷書に似ています。おかしな色に染めれば呉服屋が笑われます。
私と染め職人さんのチームワークで、お客様の満足を創り出す作業はなかなか大変ですが、たとえようもなく面白いものでもあります。
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