2004年11月のお手入れ品

裏に凝る

黒留袖八掛

江戸っ子は着物の裏に凝ると昔から言われています。一般的には羽織の裏ですが、以前取り上げたように表から見えない長襦袢もその範囲に入ると思います。

左の写真は黒留袖とその八掛を立褄から左右に広げたものです。表(向かって右)は水墨画調の渋い竹林の模様。裾が翻ったときに見える裏の部分、私たちは「引返し」と呼んでいますが、ちょっと寂しく思うのは私だけでしょうか。

仕立て直しの機会を得て柄を足してみました。

ただ、足すといってもさじ加減が大切。さてどの程度・・・。

加工後

引返し加工後

笹を足して雲取りを銀線で仕上げ、白い部分を少しぼかす。作業としてはたったこれだけのことですが、表裏の気脈が通じたようです。

仕立て上がると重厚さが全く変わってくるから不思議です。いつも念頭にあるのは全体のバランスで、欠けている部分が「ここを直してくれ」と訴えてくる気がするのです。

ところがマニュアルなどどこにもありません。師匠から授かった直感が全てです。

それを感じ続けるためには、ひたすら絵画や骨董品を見るしかないと信じています。

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