お母様が袖を通された着物には、特別な思いをお持ちの方も多いようです。
生地は柄を織り出してある(縫い取り)のお召しですが、おくみが付いた半天に仕立ててありました。着丈は全く短く、また地厚の生地のため縫込みはいたるところで切り落としてあり、コートの立衿を取るところが見当たりません。
一度はお断りしたのですがそのお気持ちは並々ならぬものがあり、意気に感じて何とか工夫することとなりました。
ネックは立衿、継いであるコートなどいまだ見たことがありません。しかしながら、模様の特徴を生かして柄合わせをすれば、何とかクリアできるのではないかと思い始めて仮縫いをしてみました。(接ぎ目は下の部分真ん中に、白い糸がつけてある所です)
柄合わせには悩みました。限られた条件の中で、できるだけ違和感のない自然な配置、すなわち柄の色と模様の垣根、ススキの穂まで合わせました。
ここまで考える呉服屋がいるのだろうかと思いつつ、お客様の喜んだお顔を想像しながら気合で仕上げました。
また、接ぎ目のかさばりを防ぐため、衿の裏側には柄のグレーに染めた無地の生地をつけてあります。
お客様の思い入れが深ければ深いほど、何としても直そうとファイトが沸いてくる。ここ数年そんな毎日が続いています。
今年もご覧いただきましてありがとうございました。
どうか皆様、良いお年をお迎えください。
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