白地の着物は華やかさのある反面、時間の経過につれて生地の黄変や汚れが目立ってくることは、避けられない現実です。
左の着物は今から30年以上前に作られた訪問着です。現在ではもう織ることが出来ないような凝った地模様のある白生地をバックに、カトレア風の花の丸が描いてある古典的な優しい模様の品物です。
右下の大きな黄色いシミの他にも全体に点々と汚れが出ており、花の縁に沿った金線仕上げも傷んでいます。そして ベージュのボカシ八掛けも表の裾に映っています。
この着物を甦らせる方法はあるのでしょうか。
解いて洗い張りとしみ抜きをした後、柄を伏せて地色を掛けました。するとどうでしょう、生地の質感までが変わってくるのですから染め物とは不思議なものです。
もちろん柄の中も入念な仕上げを施し、アクセントとして花びらに少し金を散らしました。八掛は同系色の濃いめで締まった感じにしましたが、全体の調和としてはまずまずの仕上がりかと思います。
30年の時代を超えて現代風に甦らせるのは、月並みな加工ではとてもおぼつきません。
構想、洗い、染め、金加工、仕立などの職人さん全てが綿密な連携をとることによって成せる技と思う、今日このごろです。
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