2004年9月のお手入れ品

仕事の巧拙

蘇州刺繍訪問着の背中部分

長い間、仕事に関わってきますと色々な品物に巡り会います。他店でお客様が満足のいく仕上がりならば、正直なところ私の出番はないわけですが、世の中そう上手く事が運ぶばかりでもないようで、困り果てて私のサイトにたどり着く方もたくさんいらっしゃいます。

たとえば左の写真、蘇州刺繍の上品な訪問着ですが、他店で背中の汗を抜く際に薬品を使ったようでした。その場は良かったのですが、すすぎが不十分だった為に帯枕のあたる部分が薬品焼けして、今にも穴が開きそうな状態です。

すぐ上には衿肩明きの切れ込みがあり、手前にずらすわけにもいきません。

お受けしたものの、三輪屋の大ピンチです。

加工後

前後切り替えた訪問着

これは悩みました。 腰揚げの部分で切り、前後ろを入れ替えて接ぐまではすぐに考えついたのですが、帯枕の範囲が広く、どうしても上前の衿の脇に弱っている部分が出てしまうのです。

それから3ヶ月、一杯飲んでいる時に突然アイディアが湧いてきて無事に完成となりました。なお肩に見えるのは、元の胸の柄です。

つまり、品物を前にして考え込むのはどうもうまくないのです。昔からアイディアが湧くのは3つの上(馬上、枕上、厠上)と言われますが、いつも心の片隅に置いておくと全く関係ない場面で解決策が浮かんでくるから不思議。

お預かりから1年がかりの作業、お客様も私も普通より少しだけ気が長いのかも知れません

呉服三輪屋 〒164-0012 東京都中野区本町2-54-17
代表者   三輪 一夫

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