2005年5月のお手入れ品

地色との調和

刺繍色留袖

左の写真は、30年ほど前に作られた色留袖です。白生地を水色に染めて、刺繍だけで色紙模様を描いています。

しかしながら時間と共に次第に派手になり、また、加齢による肌のくすみもあるので、もう少し地色を濃くして欲しいとのご希望です。

手馴れてはいる柄伏せ色揚げですが、掛ける色の選択を誤ると全てがぶち壊しになるような気がしてなりません。

果たして、どんな地色を選ぶのが自然でしょうか。また、色紙の中にある水色(これも地色です)はどうしたらよいでしょうか。

加工後

色留袖色揚げ後

職人とも話し合ったところ、柄の中に入り込んでいる地色まで濃くすると非常に手間がかかる上に、刺繍が引き立たなくなる可能性が高いとの結論が出ました。また、地色を柄の周囲で薄くする(ぼかし落とし)の技法も考えましたが、やはりインパクトが無くなりそうです。

それゆえ元の地色と同系統の色を選択し、自然な濃淡を感じるようなイメージで、染め出しをしました。

染めの発注には万全を尽くし自信もありますが、出来上がってくるまではいつも心配が絶えません。万が一の時は作り直すぐらいの気概がないと、とても出来ない仕事です。

しばらくして手元に戻ってきた品物は、手前味噌かも知れませんが以前より柄が締まって遠近感が出てきたようでした。

呉服三輪屋 〒164-0012 東京都中野区本町2-54-17
代表者   三輪 一夫

Tel&Fax03-3372-0573
mail@gofukumiwaya.com
無料相談会