どんなに技術を尽くした着物でも、残念ながら時間の経過と共に染料や箔が劣化してくることは避けられない現実です。つまり、洗って汚れを落とすだけでは元には戻らない場合があります。
もちろん修復を承った時、製作された当初の状態に戻すのがパーフェクトな仕事です。しかし、色々な事情でそうもいかない場合もあり、どの程度戻すかが問題となってきます。
左の写真はお母様からの黒留袖ですが、黒の染料や金箔部分、白の胡粉、シミ等々数多くの問題を抱えていました。
この場合、どこまで修復するのがベストでしょうか。
まず第一に、どのくらい費用をかけるかということになります。
価値の無い品物にお金を使っても意味がありませんが、反対に、節約して中途半端に修復しても傷んだ部分が目立ってしまい、作られた方への感謝の気持ちが伝わらないような気がしてなりません。
今回の修復の各作業は、それぞれベテランの職人に依頼しましたが、その人たちに共通するのは難しい仕事になればなるほど信頼関係が全てということです。いきなり加工賃を提示しても、まず受けてもらえません。信頼して”任せる”ということで、今までどのくらいの困難な仕事をこなしてきたことでしょうか。
この留袖も黒の色揚げ、しみぬき、金箔と白の胡粉等々、どれひとつとっても劣らぬように常にバランスを考えて加工を施しました。
お客様からもお任せいただいた結果、右の写真のように黒の色と鳳凰の彩色の冴え、金の霞など全てがすっきりと蘇りました。
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