リフォームのご依頼で品物を拝見した瞬間、ほとんどの場合にその仕上がりの姿が想像できます。しかしながら、お客様のご意向や予算、生地の状態などの諸条件によって、どこに落ち着くかが問題となってきます。
左の写真は手刺繍の入った鼓模様の染め丸帯です。このままでは締めにくいのです。
傷んでいるたれ先の交換、太い界切り線、刺繍は写真右上の元の太鼓部分だけにあり、裏の幔幕模様も活用したい等々、それぞれが頭の中を駆け巡っています。
果たして5つ、6つもの条件が全てクリアできるのでしょうか。そして、イメージを変えずに締められるような帯になるのでしょうか?
帯は太鼓が命です。ですから、鼓の柄が繰り返し出てくる中で生地丈の制約も考えつつ、たれ先との組み合わせが最も美しい部分を探しました。結果的には刺繍が上手く出ましたが、これはあくまでも偶然の産物です。
前の柄には裏の幔幕模様を使いましたので、変化に富んだ帯になったような気がします。
今回の加工は直感が全てといっても過言ではありません。しかしながらその裏側には、これまで膨大な量の美術品や絵画を観てきたという自信の裏打ちが少しだけあったからこそ成し得た仕事でしょう。
この帯が、東京から遠く離れた地で活躍していることを思うと喜ばしい限りです。
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