結婚式に使う黒留袖、以前は別誂えのご注文が数多くありました。 縮緬の白生地を仮縫いし青花(露草の花の汁)で下絵を描き、友禅を施して黒を染めていました。
その図案を決める時は、数多くの見本帳の中からお客様と一緒にお好みの柄を選んでいたのです。 その見本帳(黒白写真)は今でも大切に保存してあり、呉服屋にとってはバイブルのようなものです。
さて左の写真は、その見本帳にありそうな扇面散らし模様黒留袖縫箔。友禅、刺繍、金箔とも第一級の仕事がしてあり、現在でも十分通用しますが、三輪屋の眼で見てみると何か足りないような気がしてなりません。
お母様から受け継いだお客様も同感で、イメージを崩さずに一味加えて欲しいとの事。さて、どんな加工を施すのが自然でしょうか。ご覧の皆様はもうお分かりと思いますが・・・。
扇と扇の間には余白とも言うべき微妙な空間が存在しています。つまり、開き具合の異なるものをバランスよく配置していますが、遠近感にやや欠けるように思えるのは、私だけでしょうか。
今回は普通の金砂子の箔ではなく、形を持った“型箔”を配置してみました。型箔自体も遠近感を持っていますので、扇面を避けて蒔くと遠景、近景がはっきりしてくると同時に、固かった柄全体に柔らかな調子が出てくるように思います。
こうして出来上がってみると、ただ箔を蒔くだけの簡単な作業と思われがちです。しかし実際は、その位置や数、大きさと粒の種類、色調など、店の本質が問われる一時も気の抜けない加工なのです。
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