TOP>バックナンバー>2021年8月

手技の極み

　相変わらず身動きの取れない日々が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今月は　夏休みを頂きまして　リフォームのページは休ませて頂きます。

　秋も深まった１１月のある日、都心にある美容室からお母様と７歳の女の子の着付けを依頼されました。
オーナーは有名店で修業後独立して２０年、芸能人やモデルさんも御用達の人気店です。

　お客様の到着前に見てみると、７歳の着物は大叔母様があつらえた、４０年ほど前のお品物。
時代は経過していますが柄も生地も上質で、小物類も全て揃っていました。
ところが　どこにも「揚げ」がありません。

　７歳着物に腰揚げはなくても大丈夫ですが、肩揚げ無しでは御手がすっかり隠れてしまいます。
時間がありません。また、ただ揚げをすればよいというものではなく「恰好」のものなので意外と難しいのです。
皆さんお手上げです。そこで、えいとばかりにその場で羽織ってもらい、私が揚げをすることに。

　肩揚げを付けている間　眼の前ではオーナーによる七五三ヘアーセットが進行。
カーラーで巻き　だんだん美しくなっていきます。
そして振袖向きとはちょっと異なる、かわいらしくてボリュームのある髪型が出現。
私は間近で、その繊細な技術と手さばきに見とれました。

　ほどなく　お母様もアップが完成。
私の肩揚げも　裄ぴったりに出来上がり、お二人の着付けもきれいに仕上がりました。
ご一緒の祖母様も　大喜びでした。
専門家の優れた技術は　大したものです。私も負けないように　研鑽をつまなければ。