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2022年8月のお手入れ品

水準を揃える

なかなか平穏な日々が戻りませんが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今月は 夏休みを頂きまして リフォームのページは休ませて頂きます。

数年前から、国内各地のユネスコ世界文化無形遺産の山・鉾・屋台めぐりを始めました。 早い話が山車(だし)まつりで現在33件が指定されており、その半数近くを既に見学しました。
 しかし、今回の自粛が3年近くも続き一時はどうなる事かと気をもんでいましたが、各地で次の世代への伝承の問題もあり、ようやく再開の兆しが見えてきました。
 祇園祭、高山祭を始めとして、豪華絢爛な装飾品を眺めて一杯飲むのは、美術品好きにとってはこたえられない楽しさがあります。ただ、一年中まんべんなく開催されるものではないので、近頃は他の山車祭りも調べて見に行くようになりました。
 先日、とある山車祭り会場を訪れたところ、丁度駅前広場に向かって各町内の山車が巡行して来るところでした。そこの山車には彫刻と大きな時代人形、見送り幕という山車を囲む大きな刺繍や織物の布がセットになっています。
 何台目だったでしょうか、にぎやかなお囃子と共に手の込んだ彫刻と伝説上の人物の大きな人形、一目見て素晴らしいと思える利休色に金の波の刺繍の幕の山車が眼に入りました。 非常に手が込んでいる上、色柄、バランスも良いと思ったのですが、その下に飾ってある今回新調したと思われる真紅に金一色の縫いつぶし刺繍の幕が、どうも薄っぺらく見えるのです。
 製作する側に立てば、むろん予算の制約もあり、思う様に行かないのはよく分かります。しかし、構想の段階で一年こっきりではなく今後数十年使うことを考えると、やはり街中を巡行する姿を想像しての入念なシュミレーションが不可欠ではないかと思うのです。
 何事にも共通しますが、ものを作る場合それぞれの水準(グレード)を揃えることが大切で、ひとつでも格下があると他の優れたものまでが霞んでしまうことがよくあります。
 近年はグローバルになり見る方々の眼も肥えてきました。 食べて消えるものではないので、自分の仕事も質を揃えて心して行わなければいけないと気が付いた小旅行でした。

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