2022年11月のお手入れ品

30年後の白地掛け着

藤色無地紋付き七歳着物

 今月は10月に引き続き、七五三つながりで7歳の無地紋付き着物をご覧に入れましょう。地模様は鏡裏紋で風格があり、糸の質が良く染め上がりが重厚です。

 そして表は藤紫色の別誂え染めで令和らしくお洒落に、裾裏地はバランスを取って子供らしいピンクにしました。

 ところでこの着物は、30年前の白地宮参り掛け着を染め直した品です。掛け着と言えば身丈1メートル、袖丈60センチ弱のはずですが、この着物の身丈は140センチ、袖丈74センチと大きくなっています。

先月に引き続き、その真相はいかに。

加工前の品

白地紋付き宮参り用掛け着

 その答えは、1反で12mもある丹後ちりめんの反物を、裁断せずに全て縫い詰めて表裏無双仕立て(裏地無しの2重)にしてあることでした。 私がお伺いする以前の呉服屋さんのお品物で、初めて見た技でした。
 但し、この白着物は四つ身と言って左右の身頃と背縫いがありますので、厳密に言えば宮参り着物(掛け着)の一つ身とは異なるのですが、この縫い込みの技には驚嘆しました。今、縫える方はまずいないと思うレベルです。

 そこで仕立てた方に敬意を表し、まず、白生地を特に入念に洗って仕上げました。これが今回の加工の重要なポイントで、この作業を省くと染め上がりに大きな危険があります。万一シミが浮いてくると取り返しがつかない事になるためです。 洗いの職人さんに納得がいくようにお任せした結果、新品からと同様に無事染まりました。目出度しです。

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