2005年7月のお手入れ品

時代を合わせる

扇面振袖の袖付

着物を修復する場合、お客様のご希望が全て叶えば言うことありません。 しかしながら現実は、ご予算やサイズの限界、生地の状態による制限等々、加工に取り掛かるまでに打ち合わせることがたくさんあります。そして、解いて中を見てみないと分からないことも多いのです。

左の写真は、お母様の朱地扇面模様の振袖の袖付け部分です。お嬢様用に裄を出したいとのご希望で解いてみたところ、縫込みの中に金箔がないことが分かりました。

以前取り上げた品物の場合は (2003年6月) 新しいお品でした。今回は製作から30年以上経過しており、金の色も微妙に時代がかっています。

当時の金箔が存在するわけもないのですが、果たして無事に柄がつながるでしょうか。

加工後

袖付け加工後

今回の場合、扇面の骨を合わせることには無理があるため、地紙の部分を埋めることに集中しました。

足したところは牡丹の花と金、写真をご覧いただけばお分かりと思いますが、果たしてどんな配合の箔なのでしょうか。色がよく合っていますが私にも想像がつきません。

また、骨の部分のずれは脇に入るため、あまり目立たないのではないかと考えます。

地味ですが、こうした企業秘密ともいえる職人の技によって、私は数え切れないほど助けられていることを実感しています。

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