きものを着た時、脇に汗をかいたまま放置しておくと、茶色い変色を招いたり穴が開くということは以前にも取り上げました。(“汗の変色”をご覧ください)
その題材は白地の小紋でしたので、ご覧戴いた方々の中には「私の着物は濃い色だし、万一の場合でも目立たないから大丈夫」と思われた方もきっといらっしゃったことでしょう。
さて、左の写真は黒地の訪問着ですが、胸の部分の仕付け糸で囲った所の中に縦に白いものが見えます。汗の塩分で絹が腐食して裏地の白が見えているのです。
油断は大敵!大切な着物ですので裏から黒い布を当てるだけでは能がなく、何か名案はないかとのご依頼です。放っておけば穴は広がる一方なので、まず、残っている塩分を取り除く作業に取り掛かりました。
いろいろ考えた末、穴の部分は縦に開いているので、裏打ちした後に衿と同じ柄を足すことにしました
穴の開いた所には、いくら上手に裏から当てても穴の段差が残ります。それゆえ金の箔で笹の葉を描いてその段差を埋め、柄のイメージを出来るだけ近づけました。
最近、着物リフォームでよく言われる柄足しは、一見すると簡単そうに見える技術ですが、柄の流れと線の勢い、配色の色合わせ等々きめの細かさが不可欠です。
描き足したことが明らかに分かるようではセンスが疑われますので、実際、どの職人でも出来るというものではありません。
私は巡り会ったこの職人さんをこれからも大切にしていきたいと、常々思っています。
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